音響設備メーカー別 駅メロ分類

2.音響設備メーカー別のメロディー分類(続き)

(5)カンノ製作所(公式サイト)
 1930年設立、本社は福岡県。鉄道系の情報通信機器を扱う。
 JRグループでは西日本各地、東日本では現・八王子、長野、秋田支社管内に分布。九州ではメロディーの使用はほとんどないが、地元企業とあって放送設備の多くは同社製。中小私鉄にも多く見られ、同じ音源を会社問わず様々な場所で使っている代表例といっていい。

◎グループ1 
曲の例 西武旧発車 ・京都旧接近・入線 ・ほくほく線通過入線など[外部]
作曲  
初採用 1988年 西武鉄道
主な使用駅 上諏訪、明科、山陰本線(米子支社管内)など
 全国さまざまな場所で使われた実績のあるグループ。初めに使ったのは西武とみられ、1988年から90年にかけて50種類近くを発メロに採用したという。基本的に5秒前後の長さで単音のものが多い。
 同じ音源が複数の場所で使われている例としては、「西武池袋など旧発車=JR京都旧接近=愛環中岡崎接近」「西武球場前旧発車=ほくほく線まつだい通過入線=山陰本線(米子支社)など入線」「府中本町旧2番線発車=土佐くろ接近・発車<府中本町2番>」など、他多数。
 気になるのは各駅で異なる愛知環状鉄道の接近[外部]。曲のつくりがこのグループに似通っているものが多いが、一部にユニペックス系で挙げたサウンドファクトリー制作の曲が混じっている。京都の接近・入線は2015年に安全対策の一環として音色を見直した音源に差し替えられたが、同じく音色を見直したカンノ系ではない他の曲(JR神戸線・大阪環状線接近・入線、山陽新幹線・北陸新幹線発車)も同じ音色をしているため、別会社がアレンジした可能性もある。
 一部はリメイクされ、グループ3で再び使われている。

◎グループ2
曲の例 <近郊地域15番><近郊地域16番> ・<府中本町1番> ・青梅線旧接近[外部]
作曲  
初採用 1992年2月 甲府?
主な使用駅 現在不使用 
 2とは異なり、電子オルガン調の音色で統一されたグループ。<近郊15,16番>は上下線セットで使われ主にJR東の現・八王子支社管内で聞かれ、青梅線には接近メロもあった。2000年代から数を減らし、最後まで残った甲府も2010年に消滅した。<府中本町1番>は1992年から93年頃の短期間しか使われず、グループ1の<府中本町2番>に置き換えられた。
 かつて多くの駅でユニペックス系の曲が入線に使われていたJR西の山陽本線広島〜下関間のうち、岩国は<近郊15,16番>だった。この駅だけカンノの設備だったのだろうか。

◎グループ3
曲の例 ポートライナー接近・発車 ・日暮里・舎人ライナー発車[外部]
作曲  
初採用 2005年12月 ポートライナー
主な使用駅 ポートライナー、日暮里・舎人ライナー
 1の曲をリメイクしたもの(「ポートライナー1番接近≒<府中本町2番>」「ポートライナー2番接近≒西武高田馬場3番旧発車=明科旧接近」「ポートライナー発車≒京都旧接近・入線=西武旧発車」)。「ポートライナー1番接近」は2の音色の香りもし、短縮されて日暮里・舎人ライナー発車にも使われている。

◎グループ4
曲の例 六甲ライナー接近・発車 ・長野4番[外部] ・宇部線接近・入線など
作曲  
初採用 2011年頃 六甲ライナー
主な使用駅 茅野、六甲ライナー、JRきのくに線など
 1と同様、5秒程度のものが多い。このグループに属するかはっきりしないものの、同社製の設備が使われていると推測される駅では、音色が共通しているメロディーが多い(「六甲ライナー2番接近=同発車=<長野4番>=宇部線接近=きのくに線・和歌山線(和歌山支社)接近」「山陰本線・山口線(広島支社)入線=きのくに線・和歌山線入線=多摩モノレール発車」)。「山陰本線・山口線(広島支社)入線「多摩モノレール上り発車」[外部]は独特の5拍子という共通点もあり。

(6)TOA(公式サイト)
 1934年創業、本社は兵庫県。音響、映像、通信機器のメーカー。1970年代から京成電鉄や南海電鉄へ駅自動放送システムの納入実績がある。

◎グループ1
曲の例 烏山発車 ・新津旧接近[外部]
作曲 TOA
初採用 不明
主な使用駅 烏山
 防災無線や学校などで使われている同社の時報チャイム用機器「メロディクス」の音源。烏山では同製品のタイマー機能を応用し発車予告に使われている。2009年頃までは音色が異なっていた(防災無線マニア界でいう“旧音源”)。現在は「エーデルワイス」「恋は水色」「夕焼け小焼け」「ふるさと」だが、2003年まで後2曲は「野ばら」「家路」だった。
 新津では2003年まで“旧音源”の冒頭が接近メロになっていたが、設備は永楽電気だったと思われる。

◎グループ2
曲の例 遠鉄接近・入線・発車 ・東武発車 ・西鉄発車など[外部]
作曲  
初採用 2006年3月 ゆりかもめ
主な使用駅 東武東上線、遠鉄、東海道線(JR東海管内)など
 カンノ製作所と同様に複数社で使われている音源。同社が2003年に発売した自動放送機器「サウンドリピーター」に付属するサンプル音声CDに「オリジナルチャイム」の名で収録されていたことが判明している。ゆりかもめが最初と思われるが、それよりも前から使用している東武池袋の発車前チャイム[外部]遠鉄下り入線[外部]が似ているのも気になる。駅メロとしてつくられたものではないため、むしろ公共施設やショッピングセンターの館内放送、エスカレーターの注意喚起放送などでの使用実績のほうが多い。海外輸出され中国の高速鉄道や地下鉄で使われている例も。
 JR東の都心部では近年になって入線メロが流れる駅が増えているが、その多くがこのグループの音源(設備自体は変わっていないので経緯は不明)。北千住では同じメロディーをJRが入線に、東武が発車に使うという事態も発生した(現在は変更)。
 東武の発車は2020年から音色を変えた音源[外部]になった。TOAが関わっているのか、それとも東武オリジナルでアレンジしたのかどうか。


(7)独立系
 その他の制作会社については別ページ「駅メロをつくる人たち」を参照。

3.特殊例

 2で紹介した音響設備メーカーとメロディー制作会社の関係が一致していない例を一部紹介。
○池袋 同じホームで他社同士の曲を併用。8線のうち、5線がパナソニック系、3線がユニペックス系。
○赤羽 同じホームで他社同士の曲を併用。8線のうち、4線がユニペックス系、2線がパナソニック系、2線が永楽系(うち永楽系2線は2018年からご当地駅メロに変更)。
○南武線西国立〜分倍河原間 パナソニック系と永楽系の曲を併用。設備はパナソニックと思われる。
○館山 永楽系の「浜千鳥」だったが、設備をパナソニックに置き換えた後も使用(地域ゆかりの曲として選ばれていたため。2019年からご当地駅メロに変更)

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