音響設備メーカー別 駅メロ分類

2.音響設備メーカー別のメロディー分類

ここからは音響設備のメーカー別にメロディーを分類し、音源の特徴や使用地域の傾向などについても触れていく。

(1)ヤマハ(公式サイト
 1897年設立、本社は静岡県。いわずと知れた世界を代表する楽器メーカーで、オーディオ機器や自動車部品なども扱う。

曲の例 ピアノの鐘的な響き ・ミュートピアノと鈴 ・ハープとせせらぎなど[外部]
作曲 井出祐昭
初採用 1989年3月 新宿、渋谷
主な使用駅 現在不使用
 国鉄民営化から2年後の1989年3月、新宿と渋谷で採用された首都圏JR初の発車メロディー。当時、駅の発車ベルがうるさいという苦情が多かったことから、サービス改善の一環としてJRから音響設備開発とメロディー制作を任された。ピアノやハープ、鐘の音色に小鳥の鳴き声などを用いた短いフレーズを繰り返し、隣り合うホームで同時に鳴っても違和感なく聞こえるように工夫された。
 徹底的なシミュレーションの上つくられた完成度の高いものだったが、音響設備の老朽化に加え、本体からスピーカーまでがセットになっておりコストがかさんだため、2001年までに姿を消した。作曲した井出氏は現在独立し「エル・プロデュース」「井出 音研究所」を設立。2019年からは発車メロディーの再受注を始めた。駅メロ本来の機能を再検討し、バラエティ化した現在の風潮に一石を投じたいという。

(2)日本電音(製造)・ユニペックス(販売)(公式サイト)
 1960年設立、本社は大阪府。音響機器を中心に扱い、「ユニペックス」のブランドで公共施設や娯楽施設などへの納入実績を持つ。
 JR東日本の中でも現・東京支社管内に集中しており、山手線や常磐線でよく聞かれるメロディー群。

◎グループ1
○グループ1A
曲の例  ・せせらぎ ・高原 ・草原[外部]
作曲 板垣牧人
初採用 1990年頃
主な使用駅 品川、日暮里、四ツ谷など
 JR東の発メロ初期から使われ、山手線など都内で聞かれる機会の多いグループ。「せせらぎ」はもともと青梅線の駅で使うために作られたといい、当初30秒あったものを短くしたのだという。4曲のうち、「草原」だけは現在聞くことができない。
 1994年から2012年かけてはJR西の山陽本線広島〜下関間の多くの駅や呉線の一部駅で入線メロ[外部]に使われていた(一部1Bも含む)。採用当時に山手線で普及が進んでいた発車メロディーのシステムを参考にして実施されたということから、納入業者が同じだったのが理由と考えられる。

○グループ1B
曲の例 清流 ・雲を友として ・こころ ・四季〜愛しき子供達へ〜[外部]
作曲 宗次郎
初採用 1990年頃
主な使用駅 鶴岡
 オカリナ奏者・宗次郎の楽曲を発メロ用にアレンジしたグループ。いわゆる「ヒーリングミュージック」で乗客の心を和ませようという意図か。1Aと同じく初期から使われていたが、著作権上の問題が発生したため2005年ごろまでに都心部ではグループ1A,3,4の曲に置き換えられた。現在は山形県の鶴岡で唯一「清流」が接近メロに使われ続けている。
 尺が約20秒と長めで、途中でカットされていることも多かった。しかも抜粋箇所は原曲の前奏に相当し、オカリナパートが入っているものはなかった。ごく初期には西国分寺や東小金井などで、原曲音源を使ったと思われるバージョン[外部]も存在した。

◎グループ2
曲の例 春風 ・陽だまり[外部]
作曲 井出正彦
初採用 1992年頃 新橋
主な使用駅 新橋、北千住、松戸
 新橋(東海道線ホーム)用に制作されたグループ。2017年に作曲者がYoutube上に音源を公開、制作した9曲の中から2曲が選ばれたこと、その2曲にも複数のバージョン違いがあることを明かしている。「陽だまり」のメロディーは入浴中にふと思いついたとか。

◎グループ3 サウンドファクトリー制作
曲の例 SF-3(教会の見える駅) ・SF10-38 ・SF22-29など[外部]
作曲 福嶋尚哉、松元祐美、青松英二ほか
初採用 2001年8月 金町
主な使用駅 品川、大崎、田端など
 著作権上の問題で使えなくなった1Bの曲の置き換えと同時に登場。初採用の金町では当初接近メロもあった。「サウンドファクトリー」(現在廃業)が制作した著作権フリー音楽を流用したもので、使用にあたり多くの曲が波形ソフトのようなもので適当な尺に編集されている。明るく陽気な曲調のものが多い。愛環や泉北高速、北神急行でも使用歴(泉北が最初?)があるほか、テレビ番組などで使われていることもある。
 作曲者のうち福嶋尚哉氏は現在、スイッチ(パナソニック系 グループ3)の契約作曲家。

◎グループ4 サウンドフォーラム(公式サイト)制作
曲の例 春NewVer ・ML-24 ・ナイスガイ!など[外部]
作曲 牧野奈津子ほか
初採用 2005年3月 三河島、取手ほか
主な使用駅 秋葉原、品川、取手など
 大阪市に事務所を構える音楽スタジオ運営・音楽制作の会社。3と同様、1Bの置き換えに「春NewVer」が使われたのが最初。以降も数曲が採用されているが、「春NewVer」を除き1曲当たり1駅での使用がほとんど。これとは別に、一部のご当地駅メロをスイッチ(パナソニック系 グループ3)から委託され制作した模様。

(3)永楽電気(公式サイト
 1950年設立、本社は東京都。鉄道用の変電所設備や通信設備などを手掛ける。JRとは国鉄時代から取引関係にあり、初期の駅自動放送の多くは同社製だった。
 現在、同社系のメロディーを使っているのはJR東日本の大宮、八王子支社管内。特に宇都宮線沿線に多いが、数を減らしつつある。初期の頃は千葉支社でも多かったが現在は消滅。私鉄では北条鉄道北条町で使用あり。かつては京王でも接近に使われていた。

曲の例 アマリリス ・牧場の朝 ・すみれの花咲く頃など[外部]
作曲 既存音源の流用か
初採用 1991年3月時点で既に館山、佐原で使用
主な使用駅 久喜、那須塩原、箱根ケ崎など
 共通点として「童謡や有名曲のアレンジが多い」「オルゴール風の音色」「旋律と伴奏だけのシンプルな構成」が挙げられるが、最大の特徴は、同じ曲(音源)でも駅によってテンポや音程、尺が異なることだ。特に採用時期が早い駅では早回しした音源を使う傾向があった。
 これらの音源は「同社が制作した」とされているが、同じ音源が防災無線や公共施設などの時報チャイムに使われている[外部]例もある。これらは駅音源と異なりテンポがゆっくりで全ての曲が完結していること、時報に使われる「プログラムチャイム」と呼ばれる設備を同社では扱っていないことから、元々それ用にあった音源を流用し、適当な長さに編集して設備に組み込んでいるとも考えられる。
 他社系の曲と比べ落ち着いたイメージがあるからか、1999年には立川(中央線ホーム)で「元の曲がうるさい」という理由でこのグループの曲に変えられたこともあった。京王では1990年頃から接近メロに使われていたが、一部駅では接近メロ向けの長さにアレンジされた別音源[外部]が使われていた(音色は異なるが、伴奏パートは同じ)。

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