北海道&東日本パスで稚内を目指す旅(その4)

 今回はJR北海道・東日本全線の普通列車が乗り放題の期間限定きっぷ「北海道&東日本パス」を使った旅。目指すはずばり、北海道稚内にある日本最北端の地、宗谷岬。7日間10,850円(1日あたり1,550円)の格安きっぷで、途中下車も楽しみながら普通列車を乗り継いで宗谷岬を目指すことをこの旅の目的とした。夜行フェリー、廃線が近いローカル線への乗車、隣の駅まで1時間かかる普通列車……。初めての体験も盛りだくさん。
 自身のこれまでの旅行の中で一番長い日程となった、6泊7日で行く「北海道&東日本パスで稚内を目指す旅」を紹介。

 4日目は道央・道東を横断。廃線になる夕張支線にも乗車する。

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【4日目】
苫小牧 6:10発
↓室蘭本線1463D普通
追分 6:46着
早朝の苫小牧駅。昨日と変わらず雨が降り続いている。
ここから札幌へは千歳線で約1時間。稚内へは札幌経由か室蘭本線で旭川方面へ抜けるのが近いが、今回は少し(大分?)遠回りして石勝線・根室本線を通り釧路へ、そこから釧網・石北本線を乗り継ぎ旭川を目指す。

まずは室蘭本線に乗って石勝線との乗換駅、追分まで。岩見沢行きの始発で乗客は6人。特急は全て苫小牧から札幌方面に向かうため、この先は普通列車のみの運行。同線内で一番輸送密度が低い区間である。

約35分で追分に到着。向かい側には千歳行きと苫小牧方面の糸井行きが停まっており、どちらも通学列車になっていた。
追分 7:08発
↓石勝線2623D普通
夕張 8:17着
ここで石勝線に乗り換え帯広・釧路方面へ。次に乗る夕張行きの発車は切欠きの4番線。回送列車で入ってきた。入線前に列車を待っていたのは1人の学生だけ。他方面の列車と比べると寂しい雰囲気。

乗客4人で追分を発車する。次の川端では1人乗車。カーブが多くなってきた。
7:41、新夕張。本来はここで乗り換えだが次の列車は8:57発で1時間以上待つ。この列車で夕張まで行って折り返してきても間に合うので、このまま乗車することとした。
新夕張〜夕張間の石勝線夕張支線は利用減少のため近く廃止されることが決まっている。

新夕張からは学生4人を含む6人、沼ノ沢からは1人乗車。夕張へ向かう人の流れはわずか。かつては炭鉱の街、今はメロンの産地として知られる夕張市だが、2007年には多額の借金を抱え財政破たんした。沿線には空き家が多く見られ、人影もない。

上り坂でカーブも多いためノロノロ。また各駅とも構内に空き地が多い。かつては石炭輸送で賑わっていたのだろう。

高校最寄りの南清水沢では学生7人が下車。通学時間帯でこの人数なのでバス利用が多いのだろうか。かわりに5人、清水沢でも1人乗ってきたが、皆で挨拶を交わしており利用客は固定されている模様。

終点、夕張の駅舎は小さく無人で市街地のはずれにある。乗客の多くは市街地の方向に歩いていった。
夕張 8:25発
↓石勝線2626D普通
新夕張 8:49着
折り返し千歳行きには、何やらカメラや機材を抱えた一行が乗り込んできた。NHKの腕章があり、TV撮影隊の模様。
他に乗客は私のほか1人。先ほどの夕張行きにも乗っていたので、私と同じように折り返し乗車しているようだ。
帰りは各駅1〜3人ずつ乗車してきて、そのほとんどが新夕張で下車した。
新夕張からは再び石勝線本線に戻り帯広・釧路方面へ進む。
新夕張 8:57発
↓石勝線31D
特急スーパーとかち1号
新得 10:01着
続いて乗るのは特急スーパーとかち。この先、新夕張〜新得間は特急列車しか運行されていないことから、同区間のみ利用する場合は乗車券だけで特急の自由席に乗車できることとなっており、「北海道&東日本パス」でも同様の取扱いを受けられる。しかし新夕張を通過する特急があるほか、接続も考慮されていないので、この特例を使ってスムーズに乗り継ぐのも楽ではない。
新得までは占冠(しむかっぷ)、トマムと各駅に停まる。この区間は国鉄末期に開業した新線なので線形がよくスピードは出るのだが、駅間が長いのでいくら特急でも隣の駅まで20分前後かかる。
いくつものトンネルを過ぎ狩勝峠を越えると、新得に向かって農業試験場の中を縫うようにして下っていく。
およそ1時間で新得に到着。特急に乗車できる区間はここまで。この先も特急に乗車してしまうとルール上、新夕張からの運賃・特急料金を全額支払うことになってしまうため、ここで後続の普通列車に乗り換える。
  駅前にある碑。「国土地理院は『北海道の重心』は、新得町にあることを発表しました」とある。「???」となってしまったが、調べてみると、地理的にここ新得が北海道(北方領土を含む)の中心となるそうだ。
新得 10:45発
↓根室本線9425D臨時快速
帯広 11:34着
始発の快速帯広行きは既に停車中。釧路に3両だけある、いわゆる首都圏色のキハ40系だ。通常なら滝川からの快速狩勝が来るところであるが、台風災害による一部区間不通のため運休となっていることから、その代わりとしてこの新得発の臨時快速を走らせている。なぜか新得発は通常より3分早く、帯広着は1分遅い。
帯広からの乗客は7人。各駅から乗車があり帯広到着時点では17人。途中7駅中、通過は3駅だけだが、交換待ちの時間が短いのでスムーズに帯広まで行った。
帯広は十勝管内の中心地。商業施設が多く人も多い。
  次の列車まで1時間ほど。お昼時でもあるので外に出て、帯広名物の豚丼を食べに行った。
入ったのは「らーめん五朗」。ラーメン屋だが豚丼(ロース900円、バラ・ロースミックス800円)が人気メニューだとか。肉は帯広でこの店でしか使われていない「ケンボロー豚」という品種。濃いめのタレが食欲をそそる。
帯広 12:42発
↓根室本線2527D普通
釧路 16:10(16:12)着
駅に戻ると、既に釧路行きが入線していた。釧路まで特急なら1時間半程度のところ、この列車は3時間半かけてのんびり走る。この5年前に乗った滝川発釧路行き8時間の旅を思い出す。
乗客は19人。池田までは普通列車でも1〜2時間に1本程度走っており、道内地方にしては多め。
13:04、幕別。交換待ちで5分遅れ。
13:22、池田。乗客は9人に。前に行った駅前のレストラン「よねくら」の十勝牛ステーキ、また食べたいなぁ。 
13:58、浦幌。6分停車。陽が出てきた。池田以来乗車は無く、発車時点で乗客は4人。当駅と次の厚内との間が十勝・釧路管内の境となり、厚内までは31分かかる。
厚内の手前、上厚内信号場では7分停まるも交換なし。上厚内はこの年3月に駅としては廃止され、信号場に転換されたばかり。使われなくなった駅舎と駅名標の枠だけが残っていた。
14:35、厚内。交換待ちで4分遅れ。
厚内を出ると一気に周りが開け、海沿いに出た。

14:48、尺別。交換待ちで13分遅れ。
15:07、音別。やっと1人乗車。
15:05、古瀬。道内では昨日通った小幌に次ぐ秘境駅とされる。近年JRは1日の乗車人員1人以下の駅を相次いで廃止しているが、この駅は最近の同社の調査で10人以下の部類にランク付けされている。定期利用者がいる模様だ。
東庶路信号場では8分停車。すぐに対向の普通列車が到着し、運転士はお互い運転台を横付けして会話を交わす。更にその間に釧路行きの特急に追い越された。
15:57、大楽毛(おたのしけ)。2分遅れ。釧路市に入り終点も近い。一気に11人が乗車。

16:12、釧路に到着。向かい側には根室行きが待っていたが、私はここから釧網本線に乗り換え網走方面へ。
釧路は期待どおり非常に涼しい。最近は避暑の為に長期滞在する人が増えているとか。
釧路 17:32発
↓釧網本線4734D
塘路 18:06着
今日の宿は釧網本線の知床斜里駅前に取ってあるのだが、なんと到着時刻の5分前に網走行きが出てしまっている。次は17:32発の摩周行きで知床斜里までは行けず、網走行きは18:52発で2時間40分後。うまく乗り継げずもどかしさを感じながら、17:32発の摩周行きに乗り途中で時間調整する。

車庫から出てきたのは、国鉄末期に製造されたキハ54形1両。なんと暖房使用中(笑)

11人の客を乗せ釧路を発車。次の東釧路では学生が10人ほど乗ってきた。ここで根室方面の線路と分かれると、左側には釧路湿原が見えてくる。

17:53、釧路湿原。近くに展望台があり観光用につくられた駅だが、明らかに地元客であろう手ぶらの若者1人が下車した。

更に列車は釧路湿原の中を進み、私は塘路というところで下車した。降りたのは私だけだが、地図を見ると近くに郵便局や学校もあり、人気のない駅ではなさそう。ここは観光列車「くしろ湿原ノロッコ」の終着駅でもあり、駅前には広場と小さな展望台がある。 
  展望台に登って釧路湿原を眺める。高さがあまりないため眺望は思ったほどではなかったのだが、他に観光客は誰もいないので気を遣わなくてよい。
車窓とは違い、湿原のその広さを感じられた。
  駅前の広場に東屋があったので、先ほど釧路での待ち時間を使い和商市場で手に入れた弁当で夕食とした。和商市場といえば自分でネタを盛り付ける「勝手丼」が有名だが、量の割に値段が高くつきそうだったので、市場の人の強い勧誘を振り切り、惣菜店で海鮮丼と寿司盛り合わせを1,296円で購入。これで十分腹は膨れた。
塘路 19:23発
↓釧網本線4736D
知床斜里 21:20着
陽が暮れ辺りが薄暗くなると、ようやく知床斜里へ向かう列車がやって来た。網走までの最終列車でもある。先客は約30人でなんと全員が学生。よそ者は私だけ。
しかし車内で会話は無くいたって静かだ。勉強したり寝たりそれぞれ思い思いの時間を過ごしている。

先ほどの雄大な湿原の景色から一転、車窓は暗闇に包まれ明かり一つもない。列車はその中をひた走る。そんな中、標茶の街の明かりが見えた時はほっとした。すると突然学生たちが動き始める。明かり=駅が近付いた目印になっているようだ。

19:44、標茶。ここでほとんどの学生が降り、残ったのは5人。摩周でも2人下車。
20:27、川湯温泉。残りの2人が降り、とうとう乗客は私1人になってしまった。ここでは交換で9分停車。駅前には温泉ホテルの送迎バスが停まっている。網走方面からの客を待っているのか。
川湯温泉〜緑間は、線内で一番駅間が長く所要時間は16分。この間にひと山越えると、オホーツク管内に入る。
周りは真っ暗、車内にはディーゼル音が響くだけ。動物が飛び出してくるのか、たまに急ブレーキがかかりビクッとする。他に客はいないし、どこに向かっているのか、何か起きるのではと不安になってしまう。

結局、知床斜里まで他に客は乗って来ず、私が下車したのを最後に乗客はゼロに。完全な空気輸送となって網走行き最終列車は知床斜里を発車していった。この路線の将来も心配である。
知床斜里駅は世界遺産・知床への拠点とあってきれいに整備されている。昨日の朝に発った函館から約700kmを走り、北海道を横断してきた。これは東京〜青森間の距離に匹敵する。