ご当地駅メロディー資料館
幻?のご当地駅メロディー


曲未定
(JR東北新幹線北上駅)

 岩手県北上市では、東北新幹線北上駅にオリジナルの発車メロディーの導入を検討していた。県内では2019年から一ノ関、盛岡、水沢江刺の新幹線各駅で地元にちなんだ発車メロディーの導入が相次ぎ、これを受けて北上駅でも導入に向けた動きがあることが地元紙で報じられていた。市は2020年3月、市立公園展勝地の開園100周年、「北上みちのく芸能祭り」60周年、それに1991年の和賀町、江釣子村との合併から30周年を記念した「北上市2021年周年記念事業」を発表。発車メロディーの導入はこの事業の一環として実施が検討されていたが、その後の事業見直しで取りやめになった。

足立区歌
(JR常磐線北千住駅など)

 2004年9月の東京都足立区議会で、北千住など区内にある駅の発車メロディーを区歌「わがまち足立」に変えて、曲を広めてみてはどうかという提案があった。区議会の記録を見る限り、区がJRに問い合わせたところ回答は「個別での対応はできない」というものだったらしく、結局それ以降触れることはなかった。ご当地メロディーは「個別で」対応しているはずなのに、足立区の話だけなぜか聞き流されてしまったことに疑問が残る。

 同曲は区制50周年を記念して制定された曲。発車メロディーにはならなかったが、現在では市のホームページで携帯電話の着メロ配信を行っており、市民へ曲を広めている。

下野市歌
(JR宇都宮線小金井駅など)

 栃木県下野(しもつけ)市では、「下野市の歌」を市内にあるJR小金井、自治医大、石橋の各駅の発車メロディーにする計画があった。同市は2006年に旧南河内、国分寺、石橋の3町が合併して発足。2016年には市制施行10周年を迎えた。「下野市の歌」はこれを記念して制定された市歌で、歌詞は市内の小中学生からアイデアを募り、作編曲は市在住の作曲家・谷内弘子氏が担当した。

 市民に曲を広め、親しみを持ってもらいたいという目的から、市はこの曲の積極的な活用に取り組んでいる。発車メロディー化はこの施策の一環として2016年度に計画され、音源制作にかかわる予算もつけられたが実施されなかった。

「ジブリ映画」テーマ曲
(JR中央線東小金井駅)

 東京都小金井市では2005年頃から、市内の東小金井駅と武蔵小金井駅でアニメのテーマソングなどを発車メロディーに流せないかと議論されていた。これは市内に「となりのトトロ」や「千と千尋の神隠し」などで知られるスタジオジブリをはじめとしたアニメ製作会社が立地することにちなんで、市全体をアニメ色にできないかという提案によるもの。その後武蔵小金井駅では唱歌「さくら」が使われるようになったため、東小金井駅においてスタジオジブリ作品のテーマ曲の採用を検討していた。

 しかしスタジオジブリへこの話を持ちかけたところ、「他でも断っているので承諾は難しい」という返答で、著作権関係がネックとなり交渉が進まなかった。その間に駅の高架化や開業60周年など節目となる年はあったが、この機会を狙って実現することはできなかった。

大森甚句
(JR京浜東北線大森駅)

 東京都大田区にあるJR大森駅は2006年6月に開業130周年を迎えた。同年10月に記念イベントが開催された際、大森駅の発車メロディーを東京都民謡「大森甚句」への変更を検討していることが明らかにされた。「大森甚句」は東京湾大森海岸での海苔漁業の労働歌として歌われていたもので、地元の要望を受け、区観光協会のサイトによれば同年10月14日より使用開始する予定だったらしいが、JRとの調整がつかなかったのか結局実現に至らなかった。

清水かつら作詞曲
(東武東上線和光市駅)

 「叱られて」「みどりのそよ風」などで知られる作詞家・清水かつら(1898-1951)は、関東大震災を機に現在の埼玉県和光市に移り住み、亡くなるまで住んでいた。これにちなみ同市や近隣の東京都板橋区成増の市民団体などでは、駅前に歌碑を設置したり、児童センターの時報チャイムを彼の曲にするなど、偉人を顕彰するさまざまな取り組みを行っている。

 これに関連し、市民から「和光市駅の発車メロディーを彼の作品にするのはどうか」という意見があり、同市が2007年7月から「東上線改善対策協議会」を通じて東武鉄道へ要望を続けてきた。その後、2020年の市制施行50周年にあわせて記念事業の一つとして実施も検討されたが、「全国的に新規の発車メロディー制作を行わない傾向になっている」「仮に実施したとしても期間限定など条件付きになる」といった理由や、費用負担の課題から断念した。

すいかの名産地
(JR山陰本線由良駅)

 鳥取県北栄町の旧・大栄町地区ではすいかの栽培が盛んであり、「大栄西瓜」のブランドでその名を広めようとしている。2007年にこの大栄西瓜の栽培開始から100年を迎えたのを記念し、町では「大栄西瓜100周年記念事業」が行われた。その事業内容のひとつに「由良駅の列車接近音を『すいかの名産地』に変更する」という企画があり、町の予算にもこれに関わる費用を計上しJR西日本に要望。同年5月の使用開始を目指していたのだが、同社から「現時点では困難」との回答を受け事業を見合わせ、結局中止となった。

 聞き覚えはあるものの何を歌っているのかよく分からないこの曲だが、元はアメリカ民謡の童謡で作詞は高田三九三(1906-2001)。彼はこの他「メリーさんの羊」や「ロンドン橋」などを手がけている。歌詞の内容に特に意味は無いらしい。

Yahoo!JAPAN震災復興企画
(使用駅未定)

 2011年3月11日、戦後最大の被害ともいわれる東日本大震災により、多くの鉄道路線にも被害が出た。インターネット検索大手のヤフーは特集記事「上を向いて歩こう特集」の中で、被災した鉄道路線の復旧支援と駅から復興を応援し「日本を元気にする」という取り組みとして、歌手・坂本九(1941-1985)が歌ったヒット曲「上を向いて歩こう」を駅の発車メロディーとするために、同曲の発車メロディー音源を無償提供するチャリティー企画を打ち出した。

 内容としては、震災により甚大な被害が出た青森、岩手、宮城、福島、茨城、千葉の6県に所在する駅に対しては、本企画へ応募することにより音源を提供。これ以外の都道府県に所在する駅に対しては、Yahoo!JAPANが行う鉄道グッズのチャリティーオークションに参加・出品することで音源を提供する。メロディーは5年間使用することができ、オークションの収益はNPO団体を通じ、津波被害を受けた三陸鉄道や被災地の復興支援に充てられるといったものだった。

 8月2日から14日まで、その後同21日まで期間を延長し募集を行い、当初の計画では震災から半年となる9月11日から使用開始する予定だったが、都合により延期された。現在では企画自体が終了している。

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