駅間連絡バス・フェリーの旅

防予フェリー(柳井〜松山)
情報更新日…2024年5月7日
※記載の内容は基本的に筆者の乗車時点のものです。最新の運行状況等をお確かめください。
●基本情報
運航事業者 防予フェリー、周防大島松山フェリー
運航区間 柳井港〜三津浜港
所要時間 2時間35分
運航本数・間隔 12往復/日(夜行あり※但し土日・日月跨ぎは運休)
運賃・料金
(大人片道)
4,200円
主な割引きっぷやサービス ・往復(復路1割引)、学生(2割引)
主な車内サービス ・自販機(飲料・カップ麺※「しらきさん」にはカップ麺なし)
・テレビ
・屋外プール(「おれんじまーきゅりー」「おれんじじゅぴたー」)
予約の要否 不要
全国交通系ICカードの利用可否 可(窓口)
その他  
公式サイト 防予フェリー
●5段階評価
項目 5段階評価 コメント
所要時間 ★★★★☆ 対岸へショートカット
運行本数 ★★★☆☆ おおむね2時間1本
運賃・料金 ★★★★★ メジャーな広島・松山航路とも同額
車内設備 ★★★★☆ 座席のほかカーペット室、ソファ等あり
他の交通機関との接続 ★★★☆☆ 松山側ではバス・電車共本数多い
●運行ルート(概略)
●鉄道駅と接続する主な発着場所とアクセス
主な発着場所 アクセス
柳井港 JR柳井港駅前
三津浜港 ・伊予鉄道松山市駅からいよてつバス56系統で約30分、終点下車(680円、朝〜夕30分毎)
・伊予鉄道三津駅から徒歩約10分
●乗船の記録
○2011年7月31日(日) 三津浜行き(柳井港9:10→三津浜港11:40)
 フェリーに乗るのはこの日が初めてだったが、初フェリーがいきなりマイナー航路だった。徳山で一泊した後、対岸の松山へ渡るため乗船した。このフェリーは山口県の柳井と、愛媛県の松山・三津浜との間をほぼ東西につないでいる。一部便は周防大島の伊保田港を経由し、なおかつ伊保田港から三津浜港までは「海上国道」としての役割も担う。夜行便も運航されているが、所要時間が2時間35分であるためこのフェリーを宿代わりにするというのはつらいだろう。

 柳井は「白壁の街並み」で観光客にも人気がある街。起点となる柳井港はJR柳井港(やないみなと)駅すぐ。市街地の柳井からは1駅で、鉄道からの乗り継ぎにも便利な立地である。しかし駅は無人で乗り継ぎ客もほとんどおらず、駅舎内に吊るされている柳井の民芸品「金魚ちょうちん」が更にのんびりした雰囲気を与えている。港は駅前の道路を渡った向こう側だが、そのターミナルビルは昭和感の強い外観だ。港には松山行きのほか周辺の離島への船も発着する。
 
 乗船するのは「おれんじまーきゅりー」。タラップから乗り込む。船内はボックス席やソファをメインに、進行方向向きのリクライニング席やカーペット室を備える。外にはデッキチェアもある。夏休みに入ったころではあるが、船内の乗客はまばらであった。電車やバスのように途中で停まったりしないので、この2時間半はそれと比べると単調に感じる。船内での過ごし方が分からなかったので、とりあえず乗船前に買っておいた雑誌で時間潰し。たまに外に出て瀬戸内海の離れ小島を眺めながら心地よい風に当たれば、ここ最近の暑さも忘れさせてくれる。

 前部の席から松山の市街地が見えてくると、フェリーは北側から回り込むように三津浜港に到着した。ここから伊予鉄道松山市駅へはバスが日中30分毎に出ているほか、徒歩約10分の距離に伊予鉄道の三津駅があり、そこから松山市駅まで約15分である。三津はかつて松山の玄関口として栄えた港町。歴史を感じさせる古い街並みを楽しみ、名物の三津浜焼きを味わって駅に向かうのもいいだろう。ちなみに松山の街の中心部はJR松山駅周辺ではなく伊予鉄道松山市駅周辺。交通機関も松山市駅を基点に広がっている。港からJR松山駅への連絡はないので、古町駅または松山市駅で路面電車に乗り換えるか、大手町駅から徒歩5分程度の移動となる。

 両岸とも鉄道との接続が比較的良く、かつての連絡船を彷彿させる。テレビなどで見る設備が充実したフェリーとは程遠いものだったが、ちょっと不便でも安く行けるフェリーの良さを知ったことで、鉄道以外の交通機関にも目を向けるようになるいい機会となった。

○2016年2月4日(木) 柳井行き(三津浜港9:40→柳井港12:15)
 再びこのフェリーに乗る機会ができた。朝、松山を出て伊予鉄道で三津駅へ。徒歩で三津浜港へ向かった。この日乗船したのは周防大島松山フェリーの「しらきさん」。周防大島の伊保田港を経由する便に充当されるもので、以前乗ったものよりも小ぶりである。しかしこの日は定期検査に伴う臨時ダイヤのため周防大島には寄らず、柳井まで直行となった。

 船へは車両と同じ船首から乗り込む。窓際に座席、船内中央にカーペット敷きのスペースを配置している。この日も天気は穏やかで、窓の外に広がる青い海と空、瀬戸内海の島々が美しい。冬なので外に出る客はおらず、本を読んだり、テレビを見たり、横になって昼寝をしたりと、船内はゆったりと時間が流れている。

 出航から約2時間。大きな橋をくぐった。本州と周防大島を結ぶ大島大橋だ。今は本州側との連絡は橋がメインであり、JR大畠駅(柳井港駅から1駅)からバスが周防大島各地を結んでいる。本州と周防大島に挟まれた大畠瀬戸を進むと、進行右側には黄色い車体を輝かせたJR山陽本線の普通列車が走ってきた。

 柳井港には定刻で到着。年季の入っていたターミナルビルは綺麗に建替えられ、柳井の白壁の街並みをイメージした外観になった。ここからJR山陽本線に乗り換え徳山へ向かおうと思ったが、残念ながらターミナルを出たところで、駅から列車が発車していくのが見えてしまった。次の列車はおよそ1時間後。駅前に小さな食堂を発見し、ちょうどお昼時でもあったのでここで列車を待った。主人が一人でやっているようだが、ラーメン、カレー、カツ丼などがどれも5〜600円と良心的であった。

○2024年3月30日(土) 三津浜行き(柳井港16:15→三津浜港18:40)
 8年ぶり3回目の乗船となった。15時39分に到着する山陽線で柳井港駅に降り立つ。駅を出て道路を渡ればすぐ港なので、乗継も無駄なくスムーズなのがこの航路のいいところだが、乗り継ぎ客はほとんどいない。

 ターミナルにはすでに乗船を待つ車やトラックが列をなしている。交通系ICカード不毛地帯だった山口もここ数年で利用可能エリアが広がり、ここまでもスイカで乗車してきたが、あまり電子マネー決済の需要がなさそうな乗船窓口でも使えるようになっていたのに驚き。ちょうどいいのでスイカで支払った。

 待合所の外で海を見ながら待っていると、折り返しとなる「おれんじぐれいす」が入港。下船と入れ替わりすぐに乗船が始まる。春休み期間であったが、乗客はざっと見ても3,40人程度で、以前乗った時とあまり大差ないように感じた。カーペット室も広々使え、足をのばしたところで16時15分出港。3月ながらこの日はいい陽気で暖かく、デッキに立っていても気持ちいい。

 出港から約15分で周防大島大橋をくぐる。周りには小さな渦潮も見られた。渦潮と言えば徳島の鳴門が有名だが、ここ大畠瀬戸もそれと並ぶ「日本三大潮流」のひとつなのだとか。ここからは左右に小島を見ながら東へ進む。ちょっと早いが、テレビを見ながら柳井で乗船前に買っておいた弁当で夕食とする。

 18時を回ると空も茜色に。外に出ると後方に沈んでいく夕日が見えた。自然と頭の中で「瀬戸は 日暮れて〜」が流れてくる。対して船内には防予フェリーのテーマソングがかかり、まもなく松山到着を知らせる。18時40分、日の暮れた三津浜港に到着した。やはり車乗船やトラックが大半で、僅かな徒歩客も迎えの車に乗り込んでいく。既に松山市駅行きのバスは終わっていたため、今回も徒歩で三津駅に向かい、松山市街へ向かった。

●補足
・柳井港ポートビルに売店等の設備なし。西隣にコンビニ、周辺に食堂等あり。
・松山と本州側を結ぶフェリーとして他に、広島・松山間の「クルーズフェリー」や「スーパージェット」がある。「クルーズフェリー」は片道2時間40分で4,500円と、当フェリーと大差ない。

●参考写真

建替え前の柳井港ポートビル(2011年7月)

「しらきさん」

船から眺める瀬戸内海

大畠付近では山陽線が並走

柳井港ポートビル

「おれんじぐれいす」

大島大橋をくぐる

瀬戸内海に沈む夕日

日の暮れた三津浜港に到着

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